今週の1冊11:「道に迷う若者へ」

「道に迷う若者へ」
髙取宗茂著 立志出版社 2013年6月刊


 
久しぶりに、「今週の1冊」です。
この本は、飲食店チェーンを経営している髙取宗茂氏(1971年生まれ)が、若者に向けて書いた本です。
主に、学生、フリーター、ワーキングプア、自分の将来が見えない人、理不尽な人生を歩み、悩み苦しんでいる人に向けて、髙取氏の半生を振り返るとともに、どう生きればいいかを語っています。
出版プロデューサーの田中克成氏が、この本のために出版社を立ち上げ、「発行:立志出版社 発売:サンクチュアリ出版」という形で出しています。
そして、この本はアマゾンで売っているにも関わらず、田中氏は、10月からリヤカーで日本中を売り回る「47都道府県全国リヤカー行脚」を予定しています。
この本の髙取氏は、ひと言でいうと「波乱の半生」を送っています。
佐賀の財閥の家に生まれるも、15歳のときに家業が倒産。18歳で福岡に出て屋台を引く生活を送ります。
「1年で360日、1日20時間以上の労働を、5年半の間がむしゃらに続けた」とあります。
その結果、「廃人のごとき極度の燃え尽き症候群状態」となり、1年間引きこもり生活に。
そして、「世の中に対する強烈な憎悪と、『借りるより、貸す側に廻ってやる』という復讐心」から、闇金業を始めます。
10年ほど続けたところで「ヤキが回り」、多重債務者の借金整理をする「破産屋」に転身。その後、飲食業を始めます。
―――
「この本で語りかけること。それは『人は何のために生まれてきたのか』という根源的な問いの答えの見つけ方だ」とあります。

髙取氏が、「本気で『やりたいこと』に出会ったのは40歳の時。いや『やるべきこと」を見出したのがその歳だ」とあります。
そして「やりたいことは『見付ける』のではなく『気付く』ものだ」とも。
この本には、いくつかの印象的な話がありますが、そのひとつが次の話。

それは、髙取氏の知人の経営者が、会社が上手くいかず、「人生を変える」ために、半年のアフリカの旅に出たいから、300万円のお金を貸してほしいというもの。
お金は返ってこないだろうと思いながら、髙取氏は貸します。
「満点の星空の下で大の字に眠りたかったのは、彼ではなく、他でもない俺自身。彼の人生がその旅で変わるのなら、俺も後に続いてみよう。そう思っていたのだ」といいます。
しかしながら「自分探しの『人生を変える旅』から帰って、彼の生活は、さらに荒んだものになった。人生は、日々の積み重ねの延長線上にある。だから、簡単には変わらない。まぁそんなことは、互いに知っていたのではあるが」と書かれています。
―――
この本では、「日常」「今」の延長で、世界を拡げることの大切さが書かれています。
「視界を狭めて、自分の周囲だけの世界が、この世の中の全てだと思わないことだ。世の中には、とんでもなく輝いている人が沢山いる」
「今いる場所を見つめ、着実に、そしてそこから確かに道を一歩ずつ歩めばいい」
また「『頑張って歩く必要はないんだよ。君は君らしく』という『優しい振りの通りすがり』から声を駆けられて、癒された気持ち」になることを諌めています。
「どうやって闘うか、知恵を絞れ。お前の全てを動員しろ。自分の人生の可能性を、今の時点から諦めるな」と、髙取氏は言っています。
―――
この本には、ある実験の話も書かれています。
「誰もいない真っ暗な建物の片隅でパイプ椅子の上に立ち、笑顔で割り箸一本をただテンポ良く上げ下げしてくれていれば月給300万円。1日8時間、週1日の休み」というものです。
この実験には、多重債務者3人に協力してもらったけれども、誰もが1カ月もたなかったということです。
「誰も見ていない、しかも一切の義務を感じない仕事は、どんなに金に困ったヤツでもやることは出来ないのである」と結論づけられています。
けれども、これを読んでいて、これをやり遂げそうな人間が、自分のまわりにはかなりいるなあと感じました。
お金のためではなく、自分を鍛えるためです。
客観的にまったく無意味、無価値なことを貫ければ、何だってできないことはない、自分を試すチャンスだと勝手にとらえて、毎日、意地でやって、「自分伝説」をつくる輩が、けっこういそうだなと感じました。
多分、そのあたりの、無意味から意味を、無価値から価値を生み出す「強烈な思い込みと行動力」が、道に迷う人と、道を創る人を分けているのかもしれないなあ、とも感じました。

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