今週の1冊:ネクスト・ソサエティ

ネクスト・ソサエティ

「ネクスト・ソサエティ」
P.F.ドラッカー著 ダイヤモンド社 2002年5月刊amazonでこの本を見る


今日の1冊は、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」です。
これは、「読まなくていい読書会」の「ドラッカー勉強会」で紹介した本です。
「ネクスト・ソサエティ」は、文字通り「次の社会」に関して書かれた本です。
2002年に出版されているので、10年以上前の本です。
この本が面白いのは、当時、2002年の時点から20~25年後の変化と、それを踏まえた10~15年後は「こうなっていなければならない」という内容が書かれていることです。
「10年後」は今であり、「20~25年後」は来ていませんが、この本はドラッカーの「先見性」を証明するものになっています。
ドラッカーは預言者ではありません。「既に起こった未来」と言っていますが、さまざまな領域に今後変化をもたらすであろう、何らかの「出来事」が起きたとき、それに気づくだけなのです。
何らかの「出来事」が起きても、変化は直ちに起きるわけではありません。タイムラグがあります。しかし、変化は早晩起きるのです。
ドラッカーは、ドイツの新聞社で働いていたとき、ヒトラーの危険性をいち早く察知して、良い条件の仕事のオファーを全部断わり、イギリス、そして、アメリカに移住していますから、もともと、変化の兆しには敏感な人だったのでしょう。


さて、「ネクスト・ソサエティ」から、私がとくに重要だと思う部分を抜き出して、まとめました。
日本の読者へ
・日本の経済に成功をもたらしたのは、1950年代以降のイノベーション、社会的な革新だ。
・これらは、1990年頃までは有効に機能していたが、もはや機能していない。いま新たな制度、政策、慣行が求められている。
・日本に求められるものは、労働力市場の流動性の確保、製造業の地位の変化への対処、教育システムを新時代に適合させていくこと、知識労働者の生産性である。
はじめに
・社会の変化は、あらゆる組織、働く一人ひとりにとって重大な意味をもつ。
・社会の変化は、最大の脅威であり、同時に最大の好機だ。
・大きな流れを知り、基本に従わなければ、単なる対応のうまさだけでは、成功は望みえない。
・大きな流れに乗っても成功が保証されるわけではないが、それなくして成功はありえない。
第1部 迫りくるネクスト・ソサエティ
・特に重要な変化は、「高年人口の急増と若年人口の急減」である。
・20~25年後には、組織の半数は、雇用関係にもない人たち(たとえばアウトソーシング先)になる。いかにマネジメントするかが課題の一つになる。
・第2次大戦後に出現した大量消費市場は、若者中心の市場だったが、これからは「中高年中心の市場」となる。
・たとえ市場と活動はローカルであっても、競争力はグローバル・レベルにあるべきことを要求する。
・働く人の主役は、「知識労働者、テクノロジスト(技能技術者)」となる。
・知識労働者には「継続教育」が必要となり、成長産業となる
・知識社会は競争社会で、ストレスも生む
・製造業の後退は、かつての農業のような保護主義をもたらすが、成熟産業に保護は無効である。
・日本社会の安定は、大規模製造業における雇用の安定に依存するところが多かったが、急速に崩れつつある。
企業の形が変化する
・正社員が減少する
・アウトソーシングが一般化する
・顧客が情報をもち、力をもつ
・産業、企業独自の技術がなくなる
トップマネジメントが変化する
・トップマネジメントは「経済」「人的」「社会」機関でなければならない
・価値、使命、ビジョンの確立が最大の課題である
ネクスト・ソサエティに備えて、変化を脅威ではなく「チャンス」ととらえ、自ら変化をつくりだすことが大事である
第2部 IT社会のゆくえ
・IT革命のインパクトは「eコマース」「大流通チャネルとしてのインターネット」のインパクトである
・eコマースでは、「配達」が最大の問題で、最大の武器になる
・企業間のeコマース、国際間のeコマースが急速に伸びる様相を示している
・新しい産業の成否は、どこまで知識労働者を惹きつけ、やる気を起こさせるかにかかっている
・コンピュータを使う能力ではなく、情報を使う能力が必要とされる
・外部の情報、非顧客の情報が重要である
・製造業は、知識を基盤とする流通企業へと変身しなければならない
・大企業は、自社以外の商品を扱う「マルチブランド」になることが大きな優位性になる
第3部 ビジネス・チャンス
起業家精神4つのわな
1 予期せぬ成功のチャンスを拒否する
2 キャッシュフローより利益を重んじる
3 マネジメントチームの欠如
4 自らの役割の喪失
イノベーション
・イノベーションとは、市場に追いつくために自分の製品やサービスを自分で変えていくことである
・起業家精神による社会の問題への取り組みは、経済活動と同じように重要である。小さく始めなければならない。大がかりな万能薬的な取り組みはうまくいかない
2つの成長産業
・「人材派遣業」と「雇用業務代行業」が急速に成長している
・人材マネジメントの欠落が問題である
・知識労働者の育成、動機づけ、満足度、生産性について、アウトソーシング先と連携する必要がある
第4部 社会か、経済か
・これからの最大の課題は、組織の自立性を保ちつつ、社会の一体性をいかにして回復するかである
・かつてのコミュニティは、束縛的かつ侵害的だった
・今日われわれに課された課題は、都市社会に存在したことのないコミュニティを創造することである
・自由で任意のものでなければならない
・一人ひとりの人間に対し、自己実現し、貢献し、意味ある存在となりうる機会を与えるものでなければならない
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